海の力を利用したクリーンエネルギー

1万トンの船を動かす力

地球温暖化対策として自然エネルギーの普及が進む中、潮流(ちゅうりゅう)や海流といった海の力を利用した発電が
注目を集めているようです。
実用化に向けて動きだしているようです。

 

2010年6月、潮の流れを利用した潮流発電の実用化実験が、兵庫県淡路市の海域で始まりました。取り組むのは兵庫県
三木市のベンチャー企業、「潟mヴェエネルギー」仕組みは、水流タービン(マグロ型プロペラ)2基を海中に沈め、
潮流によって回転させて発電を行うものです。

 

水の流れに沿って回るタービンは、長さ6b、直径3b、藻や漂流物が絡まないように流線型となっています。

 

ノヴェエネルギーが神戸大学や韓国海洋大学など共同で研究・実験を繰り返し、韓国企業と協力して製作しました。

 

淡路市の岩屋沖に停泊させた海船の両舷から2基のタービンを発電装置につなぎ、平均3ノット潮流で、20キロワットの
発電を目指しているそうです。

 

同社は2008年に小型試作機での発電に成功。今回の実験は、環境省による「地球温暖化対策技術開発事業」に採択されています。

 

同社の鈴木清美社長は企業前、大型貨物船の船長を務めており、日ごろから海の持つエネルギーの大きさを実感していたそうです。
一方、ペルシャ湾でタンカーとすれ違うたびに「資源を外国に依存する日本のエネルギー事情に危機感をもっていた」と語っている。

 

「1万トンの大型船をも押し流す潮の流れを発電に活用できないだろうか」−この思いが潮流発電のスタートでした。
10年前に同社の全身となるノヴァ研究所を設立し、以降、実用化に向けた取り組みを進めてきました。

 

転換効率100パーセント

海水の流れには大きく分けて潮流と海流があります。潮流とは潮の干満に伴って海水が移動する流れです。
このため、潮流は1日2回ずつ、周期的な変化をします。一方の海流は、海洋の一部に生ずるほぼ一定方向の流れです。

 

偏西風・貿易風などの方向の定まった風や場所による水温の変化に起因し、黒潮や湾流などが代表的です。
「日本は四方を海に囲まれた国。潮流や海流を活用することで、太陽光発電や風力発電に匹敵する自然エネルギーを生み出せるのです」
と鈴木社長(開発会社社長)は語ります。

 

天候に左右されない安定供給が可能

 

太陽光や風力による発電は天候に左右されますが、潮流発電は、地球が回転している限り潮の流れは止まらないため、安定的な発電が可能です。
発電に際しての二酸化炭素排出もありません。世界中のいたるところに水の流れはあるため、原価は無尽蔵ともいえます。

 

エネルギーの転換効率も太陽光発電にもよりますが18パーセントなのに対して、潮流発電は地形にもよりますが、60〜75%
黒潮を利用した海流発電であれば100%と、まさに究極のクリーンエネルギーです。「仮に東シナ海の海流を利用して2000キロワットの
発電装置を800基設置できれば、黒潮発電で160万キロワットの発電が実現できます。これは日本の大型原子力発電所を超えるものです」

 

 

 

コストの確保、塩害対策が課題

 

現在、海流や潮流利用した海洋エネルギー発電には、多くの国が国家予算を投入して研究に取り組み、さまざまな設備
が開発されています。しかし、今のところ実用化には至っていません。

 

今年3月、東京都の「波力発電検討会」は最終報告書の中で、波力発電を太陽光や風力と同じ「新エネルギー」に加え、国
のエネルギー政策の中で積極的に開発、導入すべきことなどを提言しました。同報告書では「2020年までに30万キロワット、
2030年までには2000万〜3000万キロワットの導入が可能」としており、海洋エネルギーへの期待は年々高まっています。
こうした中で先月末には、経済産業省が来年度から5年間、海洋エネルギー発電の実用化のために大学や企業を支援すると発表しました。
もちろん、実用化に向けた道のりは簡単ではありません。開発や実証実験にかかるコストの確保をはじめ、台風や塩害などに
耐えられる装置の開発、海の上から陸に効率的に電気を送る方法や設備のメンテナンスの確立なども課題です。

 

潮流や海流を利用した発電基地を作るには、国土交通省や経済産業省、海上保安庁、環境省、農林水産省などの許可も必要で、
特に長期の実証実験を継続するためには、ベンチャー企業の限界もあります。

 

日本は実証研究で遅れを取っており、実験海域などの整備も求められているほか、漁業権などに関する地元との合意形成
も今後の課題となっています。

 

さまざまな課題を抱えながらも実用化に向けて動きだした潮流発電。大きな可能性を秘めた、自然エネルギーの動向が注目されています。